ニュージーランド:自然災害リスクの最前線から学ぶ「レジリエンス国家」の教訓
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日本の防災と海外の防災との比較ブログ!防災士、消防設備士、消防団員、 そして社会人大学院履修科目生として 知見を活かしながら防災の知恵を配信します
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今回のテーマ!
ニュージーランド:自然災害リスクの最前線から学ぶ「レジリエンス国家」の教訓
(1)リスク/背景(2)制度・政策(3)実践・事例(4)日本への示唆・まとめ
1.自然災害リスクと地理的背景
ニュージーランドは、まさに「災害多発国」のひとつです。
NZは2つのプレート、インド‑オーストラリアプレートと太平洋プレートの境界に位置しており、地震・活断層・津波・火山・地滑りなど複数のハザードを抱えています。 Home | Te Waihanga+2civildefence.govt.nz+2
地震発生頻度も高く、年間で数千〜数万回の微震を計測し、体感できる規模の地震も多く発生しています。 civildefence.govt.nz+1
たとえば、南島では2016年のカイコウラ地震(M 7.8)など、複数の活断層が同時に破壊される「複雑な地震」も発生しています。 ウィキペディア
洪水・土砂崩れ・暴風・津波といった気象・水害リスクも顕著であり、気候変動との因果も議論されています。 dpmc.govt.nz+1
このように、ハザードの「種類」「発生頻度」「複合性」のいずれもが高く、防災・減災・レジリエンスづくりの格好の「実験場」と言えます。
2.制度・政策=“レジリエンスに舵を切る”
災害多発国であるニュージーランドは、「被災してから対応」ではなく「発生前の備えと制度構築」に力を入れてきました。以下がその代表的な内容です:
■ 国土防災戦略
National Disaster Resilience Strategy(NDRS)は、2019〜2029年の10年間をターゲットとし、国民・地域・民間・公共部門を巻き込んだ「災害に強いニュージーランド」の実現を目指しています。 civildefence.govt.nz
戦略の中で、以下のような目標が掲げられています:
防災・減災(Risk Reduction)を最優先
レジリエンス(回復力・復元力)を持つ組織・社会の形成
すべての人・すべての地域を対象とした包括的アプローチ
■ リスクモデリング・科学基盤
GNS Science や他の研究機関が、地震・津波・土砂・火山を対象にモデリングを行い、リスク評価と警戒・避難計画の基盤としています。 gns.cri.nz+1
また、Toka Tū Ake – Natural Hazards Research Platform という政府主導の研究投資プログラムも稼働しており、2024–2031年にかけて7年で約7000万NZドル(約数十億円)規模の投資が予定されています。 ビジネス、イノベーション、雇用省
■ 公共機関・災害対応体制
National Emergency Management Agency(NEMA)ほか、公的な危機管理機関が「予防・準備・対応・復旧・再建」のフェーズを通じて統合的な体制を構築。 dpmc.govt.nz
例えば、国家的な危機管理センター(National Crisis Management Centre)が首都ウェリントンに設置されており、緊急時に機能を発揮できるよう備えられています。 ウィキペディア
3.実践・事例=“備えが成す差”
制度だけでなく、実際に「備え・対応・復旧」で成果を出している点がニュージーランドの強みです。
■ 建築・インフラ面の強化
例えば、2016年のカイコウラ地震でも、大規模な活断層破壊が起きながら人的被害を抑えられた背景には、建築基準・インフラの耐震化が進んでいたことがあります。 preventionweb.net
また、地震に備えた「津波避難ルート」「避難施設」「早期警戒システム」など、インフラ・制度・市民の備えの三位一体になっている点が挙げられます。
■ 市民・コミュニティの参加
災害時、コミュニティ・住民が主体的に行動できるように、情報提供・訓練・避難マッピングが実施されています。
たとえば、ニュージーランド赤十字社の調査では、7万人を対象に「Operation Suburb」というプログラムを通じて支援ニーズや登録データを収集し、災害対応の迅速化を図った実績があります。 knowledge.aidr.org.au
■ リスク評価・未来シナリオの活用
ニュージーランドでは「50年以内にアルパイン断層でM8級の地震が発生する確率75%」というようなリスク評価を公表しています。 Home | Te Waihanga
このように将来の巨大災害を想定し、「もしも」に備えたシナリオが実践されています。
4.日本への示唆と私たちの「備え」
みのる防災として、このニュージーランドのレジリエンス国家を考えると、今の日本の防災は制度の穴が多くあるシステムで、そこには多くの問題があります。
制度を超えて「備えを文化に」: ニュージーランドでは住民・地域社会が主体として動ける制度が定着しています。日本でも「地域住民参画」「自主防災組織」「日常からの備え意識強化」が鍵です。
リスクの見える化が鍵: 例えば「50年以内にM8級」といった明確な数値を提示することで、危機感・備え動機が生まれます。日本でも、プレート境界・火山帯・洪水氾濫区域などを用いて「自分ごと化」できる情報発信が有効です。
“インフラ+制度+人”の三位一体: 建築基準・避難ルート・地域訓練、この3つが揃ってこそ効果を発揮します。日本も設備・条例・住民参画をバランスよく設計する必要があります。
復興プロセス: 災害後の復旧・再建のプロセスをオープンにし、「前より強く」なる再建の姿を示すことが、信頼・レジリエンス強化に繋がります。ニュージーランドではこの点で評価されています。
5.まとめ
ニュージーランドの防災の印象について、私は市民の防災の意識の高さを感じました。
日本でもこの「市民防災」防災というテーマと、自治体の公助と、市民の防災団体での共助がありますが・・・・・この防災にたいする立場の違いは大きな課題を持っています。
ニュージーランドの防災のまず、意識のたかさを・・
✅ 市民防災意識が“高い”と判断できる根拠
複数の公的資料・研究から、以下のような点が確認できます。
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“自宅・家庭レベルでの備え”を促す制度・施策が充実している
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National Emergency Management Agency(NEMA/旧名称:Ministry of Civil Defence & Emergency Management)の公式ポータル「Get Ready」は、「家庭(whānau)が準備をすること(Get your household ready)」を明確に促しています。getready.govt.nz+1
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また、New Zealand Red Crossの「Good and Ready」プログラムでは、家庭レベルでの備え(ハザード理解・行動計画・備蓄など)を段階的に行うことが推奨されています。redcross.org.nz
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定期的な全国調査で“準備しておくべき”という意識が可視化されている
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2024年には「2024 Annual Preparedness Survey」が実施されており、約1,700人を対象にオンライン調査が行われました。これによって、準備の状況・意識レベルが数値データとして把握されています。civildefence.govt.nz
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さらに、文献において「地域住民と緊急管理機関(emergency management organisations)が事前段階(pre-disaster)で協働している」ことが研究としても示されています。サイエンスダイレクト
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市民・コミュニティ主体のボランティア・活動も活発
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例えば、Student Volunteer Army(SVA)は、2010〜2011年の2011 Christchurch earthquakeを契機に誕生した学生主体のボランティア団体で、災害対応・地域支援でその後も活動が継続しています。ウィキペディア
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これは「災害対応=行政任せ」ではなく、「市民・若者も能動的に備える・動く」という文化の一端を示しています。
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⚠️ ただし“高い=完璧”ではない課題も
意識が高いといっても、完璧ではありません。制度側も「さらに改善が必要」と認識しています。
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公的資料の中では、「全国的に一律の最低基準を自治体が整備・実行すること」「地域レベル・コミュニティレベルのレジリエンス(回復力)強化」が今後の重点課題として挙げられています。dpmc.govt.nz
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また、意識・準備状態・情報アクセスなどには地域・属性(都市部/地方部・高齢者・マオリ/非マオリ)による格差があることも研究で示唆されています。サイエンスダイレクト+1
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